睡眠時間は確保できていても起きたときにスッキリしない、疲れが取れていない、まだまだ寝足りないと感じる人は、眠りが浅いのかもしれません。眠りが浅いまま放置してしまうと、日常生活にさまざまな問題が生じます。
ここでは、眠りが浅いとはどのような状態を指すのか、また眠りが浅いとどのような問題が生じるのか、さらに眠りを浅くしてしまう原因や対処法について紹介します。
眠りが浅いってどんな状態?
日々の睡眠に満足できていない人は、眠りが浅い可能性があります。まずは、眠りが浅いとは、どのような状態であるのかを把握しておきましょう。
日本人の7割は睡眠に不安がある
厚生労働省の調査によると、国民の約7割以上の人が、睡眠に何らかの問題を感じながら生活しています。その中でも、睡眠の質に満足できていない人は全体の21.8%もいるのです。
睡眠の質に満足できていない人の多くは、眠りが浅く、長時間眠っているのにも関わらず熟睡感を得られていません。このような状態が長く続けば、何時間眠っていても不眠症と診断されることもあります。
出典:「令和元年国民健康・栄養調査」(厚生労働省)
こんなときは眠りが浅いサイン
朝起きたときに体がだるく爽快感がない場合や、まだまだ寝たりないと感じたときは、眠りが浅いサインです。また、何とか起きられたものの、日中に強い眠気を感じて頭がぼーっとしてしまうことが多い人も、眠りが浅いといえるでしょう。
そもそも、些細な物音でも敏感に反応してしまい夜中に目覚めたり、一度起きると眠りにつけなくなったりする人は、非常に眠りが浅く、十分な睡眠を確保できない状態といえます。
眠りが浅いとどんな問題が起こる?
眠りが浅いと体のだるさや日中の眠気だけでなく、さまざまな問題を引き起こします。以下に、代表的な3つの問題をまとめました。
日中のパフォーマンスが落ちる
眠りが浅いと、日中に集中力が大きく低下するほか、注意力が散漫になります。会議に集中できず、他人が話していることがまったく頭に入ってこなくなったり、作業が思うように進まなかったりと、仕事の効率が大きく落ちてしまうことがあります。
機械操作や運転をする仕事の場合は、注意力が散漫になると大きな事故の原因にもなるため、早急に睡眠の質を改善することが重要です。
また、仕事のパフォーマンス低下がストレスとなり、さらに睡眠の質が下がって悪循環に陥ることがあります。そのため、睡眠の課題を放置せずに、きちんと対処することが大切です。
生活習慣病のリスクが高まる
眠りが浅いことで、生活習慣病のリスクが高まります。具体的には、高血圧や糖尿病、肥満などになりやすくなるのです。
通常、寝ている間は副交感神経が優位になり血圧が下がります。しかし、眠りが浅い人は常に緊張状態が続き、交感神経が優位のまま休まらないため高血圧になるリスクが高いといわれています。
また、眠りが浅い状態が続くと、血糖値を正常な状態にコントロールする役割を持つ「インスリン」の働きが悪くなり糖尿病のリスクが高くなるのです。
さらに、睡眠の質が悪いと、食欲をコントロールするホルモンの働きも悪くなります。そのため、食欲が急激に増加して食べすぎてしまい、肥満を招くおそれがあるのです。
免疫力が低下しやすくなる
睡眠をすることで、免疫力のアップにつながるといわれています。
睡眠中は、傷ついた細胞を修復したり、疲労を回復したりする役割をもつ成長ホルモンが分泌されます。しかし、睡眠時間が不足していると、成長ホルモンの分泌が少なくなり、免疫細胞の減少につながってしまうのです。
免疫力が低下すると風邪や感染症にかかりやすくなるため、日頃から十分な睡眠時間を取ることが重要です。
眠りが浅い原因5つ
ここでは、眠りを浅くしている原因について紹介します。さまざまな原因から眠りが浅くなりますが、代表的な原因を5つに絞って解説しています。
自分に当てはまるものがあるかどうか、ひとつずつ確認していきましょう。
1.ストレス
現代人にとって切り離せない問題であるストレスも、眠りが浅い原因になります。日中受けたストレスが、夜の睡眠に影響をもたらしているのです。
ストレスを受けると、自律神経のバランスが崩れやすくなります。これは、睡眠時には働かないはずの交感神経が眠るときになっても活発に働いてしまい、眠りが浅くなるという仕組みです。
これは、慢性的なストレスだけでなく、試験前や早起きへのプレッシャーなどの負の感情からも引き起こされます。また、あまり知られていませんが、旅行の前日などのワクワクした楽しい感情も、一時的なストレスとして影響することがあります。
季節の変わり目の寒暖差や、転職、引っ越しなどによる生活環境の変化もストレスになり、睡眠に影響を及ぼす可能性があります。
2.生活習慣
日頃、何気なく行っている生活習慣が眠りを浅くする原因を作っている可能性があります。例えば、就寝直前までスマホやパソコンを見ていないでしょうか。
スマホやパソコン、テレビの液晶画面からは、強い光を発しています。この強い光を見続けることで体内リズムを狂わせ、眠りを浅くしてしまうのです。
スマホやパソコンなどの液晶を見る以外にも、交感神経を刺激してしまう生活習慣はあります。熱いシャワーを浴びる、寝る前に激しい筋トレをするなども睡眠の質を低下させる原因になるでしょう。
睡眠の質を向上させるために、普段何気なく行っている生活習慣を今一度見直して、寝る前のルールを決めておくようにしましょう。
3. 特定の成分の過剰摂取
眠気覚ましに飲まれることが多いコーヒーには、覚醒作用のあるカフェインが多く含まれています。カフェインの摂りすぎは、眠りが浅くなる原因になるため、夕方にはコーヒーを飲まない、日中のコーヒーは2杯までなど、ルールを設けて過剰摂取を防ぐよう調整しましょう。
また、アルコールの摂取も、睡眠の質を低下させる要因です。アルコールには一時的な入眠効果があるため、寝る前に飲む人も多いでしょう。
しかし、アルコールには中途覚醒作用があります。夜中に目が覚めてしまうことにもつながるため、飲み過ぎには注意しましょう。
タバコに含まれるニコチンも、覚醒作用があります。寝る前の喫煙は、睡眠の質を低下させる原因になるため、禁煙できるように生活習慣を見直しましょう。
4.寝室の環境
寝室の明るさや音が、睡眠の質を低下させているかもしれません。寝室が明るすぎると、睡眠ホルモンの「メラトニン」の分泌が抑えられてしまいます。「メラトニン」は眠りを誘うほか疲れを取ってくれる、細胞の新陳代謝を促すなど睡眠の質を上げるために大切な役割を担っています。
部屋が暗いほどメラトニンの分泌は多くなるため、寝る前は部屋を真っ暗にするか、間接照明を使って明るすぎない環境をつくりましょう。
また、40デシベルを超える音があると睡眠の妨害になるといわれています。できるだけ静かな環境を構築し睡眠の質を上げてください。
5.睡眠が浅くなる病気
生活習慣や環境の問題だけでなく、睡眠が浅くなる病気もあります。睡眠が浅くなる病気のひとつに「睡眠時無呼吸」があります。睡眠中に無呼吸と呼吸再開を繰り返すため、眠りが浅くなります。
脚に虫が這う感覚があったり、むず痒さを感じたりする「むずむず脚症候群」も、不快感から眠りが浅くなってしまうものです。
そのほかにも、睡眠時にも皮膚が痒くなる「アトピー性皮膚炎」や、何度もトイレに起きなければならない「頻尿」も睡眠を浅くしてしまうでしょう。
眠りが浅くて悩んだときの対処方法
ここからは、何とか眠りが浅い状態を改善して、今の状況から抜け出したいという人に、対処法を4つ紹介します。
毎日同じ時刻に起床する
平日は仕事のため早起きできても、休日は昼過ぎまで寝てしまうという人は、毎日起きる時間を一定にすることを心がけましょう。
毎日同じ時間に起床できれば、体内時計を整えることにつながり、睡眠・覚醒リズムが安定します。リズムが整えば、起きる準備を行う「コルチゾール」の分泌が一定になるため、スッキリ起きやすくなるでしょう。
さらに、起きたときは太陽光を浴びて、脳をしっかり目覚めさせることが大切です。休日であっても、できる限り平日と同じ時間、最低でも2時間以上遅く起きないように心がけてください。
規則正しく食事をする
規則正しい食生活も、眠りの浅さの対処法です。脳と体、どちらの生活リズムも整えることにつながります。毎朝しっかり朝食を摂ることで、寝ている間に下がった体温を上げ、脳を活性化させるのです。
夜遅い時間の食事は、消化にエネルギーを使うため睡眠の質が低下します。夕食は、できるだけ21時までに済ませるように心がけ、刺激物や消化に悪い食べ物を摂らないようにしましょう。
規則正しく三食しっかり食べることが、睡眠の質を大きく向上させます。
ぐっすり眠れる室温と明るさを保つ
眠りの質を高めるには、部屋の明るさ、室温、湿度が重要です。ぐっすりと眠るためには、16〜26度の室温が適温とされています。
季節によっても快適に感じる室温は異なり、夏の場合は26度前後、冬は16〜19度がぐっすり眠れる室温です。特に夏場は、室温が28度を超えると睡眠の質が低下するといわれているため、エアコンで室温を調節するのがおすすめです。湿度は、年間を通して50〜60%が理想といえるでしょう。
また、寝るときは真っ暗な部屋が理想ですが、どうしても暗すぎて眠れないという場合は、間接照明を利用して4ルクス以下の明るさにすることをおすすめします。
睡眠の質の向上が期待できる食材を摂取する
睡眠の質の向上が期待できる栄養素には、トリプトファンやグリシン、GABAなどがあります。
トリプトファンは、必須アミノ酸のひとつで、睡眠ホルモンである「セロトニン」を分泌させる栄養素です。セロトニンはメラトニンの原料であるため、積極的に摂り入れると良いでしょう。主に鶏むね肉や牛肉、生乳、チーズ、バナナなど幅広い食材に含まれているため、摂取しやすい栄養素ともいえます。
脳に作用して、睡眠のリズムを調整してくれるグリシンも、アミノ酸のひとつです。グリシンが含まれている食材として、エビやホタテなどの魚介類が挙げられます。
脳の興奮を鎮めて、ストレスを和らげる効果があるGABAは、穀物や魚、発芽野菜や発酵食品に含まれています。
普段の食事からこれらの栄養素が摂りにくいという場合は、サプリメントで積極的に補うのもおすすめです。
まとめ
眠りが浅いと、生活の質を大きく低下させてしまいます。仕事での成果や効率にも関わり、体に不調をきたすおそれもあるため、少しでも早く改善していくことが大切です。
今回紹介した原因で、自身に当てはまるものを改善するため、今回ご紹介した対処法を取り入れて、ぜひ睡眠の質を向上させていきましょう。