お酒を飲むと自然と眠くなるからと、普段から寝る前にお酒を飲んでいる人もいるでしょう。
一見すると快適に寝つくための良い方法のように思えますが、お酒を飲まないと寝られなくなることも多いです。たまにお酒を飲まずに寝ようとすると、なかなか寝つけずに困っている人もいるでしょう。
ここでは、お酒と睡眠の関係や、お酒に頼らずに寝つきを良くする方法について説明していきます。
「お酒を飲むとよく寝られる」ってホント?
お酒を飲むとよく寝られるなら、寝る前にお酒を飲んで差し支えないのではないかと考える人もいるかもしれません。しかし、一見よく寝られているように思えても、実際はそうでないことが多いです。その理由について、お酒と睡眠の関係から見ていきましょう。
寝つきは良くなるが途中で目覚めやすい
適量のアルコールは入眠までの時間を短くするため、寝る前にお酒を飲むと確かに寝つきが良くなります。かといって、朝までぐっすりと寝られるわけではありません。
アルコールで寝つきが良くなるのは、ごく一時的な効果にすぎず、入眠後しばらく経つと睡眠の質が悪化していきます。その原因は、アルコールが分解される過程で代謝されるアセトアルデヒドという覚醒物質です。
このアセトアルデヒドの影響で入眠後3~4時間程度経過すると、目が覚めてしまうことも少なくありません。目が覚めるまで至らなかったとしても、睡眠の後半はどうしても眠りが浅くなってしまいます。
明け方に目が覚めてしまった後に、再び寝つくことができず、睡眠時間が短くなってしまうこともあるでしょう。
寝つきの良さは徐々に弱まっていく
なかなか寝つけないということで、毎日のようにアルコールに頼っていると、次第に耐性がついてしまいます。寝る前にお酒を飲むことを習慣にすると、寝つきが良くなる効果は徐々に弱まっていくでしょう。
最初のうちはスムーズに入眠できても、1週間も寝酒を続けていると、飲酒開始前より寝つきが悪くなってしまいます。
寝る前のアルコールは、よく寝られるようにするどころか、睡眠に関する悩みをより深刻なものにしてしまうのです。
入眠のためにお酒に頼るのはNG!その理由は?
なかなか入眠できないからといって、お酒に頼るのはおすすめできません。では、その理由について見ていきましょう。
睡眠の質が悪くなる
アルコールには利尿作用があります。アルコールを分解する過程で尿が作られるため、睡眠中にトイレに起きてしまうことが多いです。
アルコールを分解するために体内の水分が使われるため、喉も乾きやすくなります。水を飲みたくなり、目が覚めてしまうこともあるでしょう。
睡眠中に目が覚めることが多ければ、それだけ睡眠の質も悪くなってしまいます。
また、アルコールには筋弛緩作用もあり、お酒を飲んで寝ると、いびきをかきやすくなる人も多いです。いびきをかいているときには、気道が少し塞がれた状態になっているため、呼吸がしにくくなります。その影響で睡眠の質が悪化することもあるでしょう。
アルコールが代謝される過程で脳が活性化するため、睡眠のリズムも乱れる可能性があります。
アルコール依存症になるリスクがある
寝つきが悪いために、入眠の際にお酒に頼ってばかりいると、アルコールの量が少しずつ増えていきます。最初はごく少量の飲酒だったとしても、いつのまにか大量に飲酒をするようになってしまう人も少なくありません。
寝る前に大量に飲酒をするのが習慣となると、アルコール依存症になってしまうおそれもあるため注意が必要です。
アルコール依存症になると、自分の意思で飲酒量をコントロールできなくなってしまいます。仕事や家庭にまで影響が及んでしまうかもしれません。
節度が大切!睡眠を妨げないお酒の飲み方とは
お酒を飲むこと自体がいけないわけではなく、嗜みとしてたまに飲酒を楽しむくらいなら問題ありません。ただし、睡眠を妨げない工夫が必要です。
入眠の直前までお酒を飲んでいると、どうしても睡眠に影響を与えてしまいます。そのため、お酒を飲むのは寝る4時間前くらいまでにし、飲む量も適量に抑えておきましょう。
厚生労働省によると、1日の適度な飲酒量は平均純アルコールで約20g程度とされ、男性の場合にはビールなら中瓶1本、清酒なら1合程度が目安です。女性や65歳以上の高齢者の場合には、これよりさらに少量にとどめておくのが無難でしょう。
出典:「アルコール」(厚生労働省)
「お酒を飲まないと寝られない」状態から脱却するには
どうしてもお酒を飲まないと寝られない人は、次のような方法で脱却を試みてみましょう。
お酒以外のリラックス法を見つける
普段からお酒を飲むことでストレスを解消している人や、お酒を毎日のように飲む習慣がある人もいるでしょう。その場合には、どうしてもお酒を飲んだ状態で入眠する日が増えるため、次第にお酒を飲まないと寝られなくなってしまいます。
そうならないためには、お酒以外でストレスを解消できる方法を探してみることが大切です。たとえば、ストレッチやアロマテラピーなどをやってみることで、ストレス解消につながります。読書や音楽鑑賞などもおすすめです。
お酒以外でストレスを解消する習慣が身につけば、次第にお酒を飲む回数も量も減ってくるでしょう。お酒に頼らずとも、寝られるようになることも多いです。
昼間の活動レベルを上げる
夜なかなか寝られない人は、体内時計が乱れて昼夜逆転している可能性もあります。そのため、なるべく昼間に体を動かすようにしましょう。昼間の活動レベルが上がると、体内時計が整えられます。夜になると自然と眠くなってきて、スムーズに入眠できる可能性が高くなります。
具体的には、朝に散歩をしたり、昼に運動をしたりするのが良いでしょう。最初から本格的な運動を始めると長続きしにくいため、無理のない範囲で始めてみるのがおすすめです。運動をすることで、体力がつき体が健康になるメリットもあります。
必要に応じて睡眠薬の使用も検討する
昼間に運動をするなど、生活習慣を改善してもまだ寝つきが悪かったり十分に寝られなかったりすることもあります。生活に支障をきたす場合には、睡眠薬の使用を検討してみるのもひとつの手です。
睡眠薬なら、アルコールのように睡眠の後半での睡眠障害を起こさないため、ぐっすり寝られる可能性があります。睡眠薬と聞くと抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、正しく使用すれば、お酒と違って仕事や家庭に悪影響を与えてしまうことはありません。
寝酒をしなくても済むようになるため、アルコール依存症の防止にもつながります。医師に症状を説明し、睡眠薬が必要か判断してもらうと良いでしょう。
医師に相談する
不眠に悩んでいるなら、医師に相談してみることをおすすめします。お酒を飲まないと寝られないというのは、あまり健康な状態とはいえません。何らかの病気の可能性もあるため、一度医師の診察を受けてみることで、原因がはっきりし、アドバイスもしてもらえます。
特にアルコール依存症の疑いがある人の場合には、なるべく早めに医師に相談するのが望ましいでしょう。不眠にしてもアルコール依存症にしても、早く治療を開始した方が改善するのも早いです。
また、睡眠薬を使用するかどうか迷っている人にも医師への相談がおすすめです。医師に相談すれば、睡眠薬を使用するかどうかも含めて、指示を仰ぐことができます。
まとめ
寝る前にお酒を飲むと、はじめはスムーズに入眠しやすくなります。しかし、日常的に寝酒の習慣を続けていると次第に耐性がつくようになり、睡眠の質を悪化させてしまいます。途中で目が覚めてしまったり、浅い睡眠になってしまったりすることが多いです。最悪の場合、アルコール依存症になるリスクもあるでしょう。
そのため、お酒に頼らずに寝つけるようにすることが大切です。昼間に運動をして体内時計を整える、お酒以外の方法でリラックスするなどの方法で解決できることもあります。もし自身で改善できない場合には、早めに医師に相談してみましょう。